国内外でリサイクル由来の材料に対する需要が高まるなか、PGM事業では自動車やオートバイ産業に欠かせない貴金属であるプラチナ、パラジウム、ロジウムを取り扱っています。Hondaグループのビジネスで培った強みを活かしていかに事業を拡大していくのか、他メーカーへの活用の展望はあるのか。非鉄資源事業部と設備・環境事業部のおふたりに、現状や今後の取り組みについて聞きました。
※情報は2025年3月時点のものです。
調達・供給にとどまらない顧客価値を追求
廃車由来の触媒から貴金属をリサイクルし触媒メーカーに供給する事業について、貴社の特徴を教えてください。
児玉:当事業部は、自動車やオートバイ産業に欠かせない貴金属であるプラチナ、パラジウム、ロジウムを取り扱っています。これらの白金族金属(PGM: Platinum Group Metals)は、エンジンの排気ガスに含まれる有害ガスを大幅に削減する触媒(キャタリスト)に使用されているのです。
私たちは、PGM貴金属に関するグローバルネットワークを活かし、世界中のHondaや部品メーカーの製造現場に対するPGMの調達と、在庫管理を含むサプライチェーンマネジメント(SCM)を強みとしています。
さらに、これまでの経験値を基に、メーカーさまや車種により異なる触媒の種類と量を把握したうえで、オペレーションをコントロールできることも強みです。
当社のもう一つの特徴としては、鉱山・化学・金融・商社・リサイクラー(再資源化事業者)など複数の調達先を活用できる"マルチソース化"があります。PGMは高額材料のため、キャタリストメーカーさまの在庫・資金負担なども考慮しながら、顧客視点の"商物一貫ソリューション"を提供しています。
村上:私たち環境ビジネス課は、廃車由来の触媒を車の解体業者さまから仕入れています。つまり、解体業者さまが車をスクラップ処理する際に発生する触媒を、私たちが買い取らせていただくというスキームです。
そして、協力精錬メーカーさまが触媒からPGMを抽出し、当社のPGM課がそれを引き取ります。さらにPGM課はその貴金属をキャタリストメーカーさまに供給し、最終的にHondaグループの生産に戻すという循環的な取り組みです。この取り組みは日本、中国、米国で行なってきました。
インド、インドネシアなどでも触媒のリサイクルニーズが高まる
循環バリューチェーンを構築するうえでの課題があるとすれば何でしょうか?
村上:グローバルで見てみると、例えばインドにも不使用になった触媒や欠けてしまい使用NGとなった触媒があります。それらを回収して、自動車生産に戻すという取り組みも始めました。
実はインドは精錬技術が未発達なため、使用済みの触媒が適正な価格で売買されていませんでした。これまでスクラップのように捨てられていたものを、私たちのスキームを活用することによって貴重な資源を適正な価値で評価する事が可能になりました。
さらにベトナム、インドネシア、マレーシアなどさまざまな国の当社現地法人から、「うちも触媒をリサイクルして欲しい」といった問い合せが来るようになりました。
- ー廃車由来の触媒から回収したPGMの再資源化は、他の自動車メーカー向けにも事業を広げられそうですね。
- 児玉:循環型社会の実現、またリサイクル材の価格競争力の創出を視野に、自動車メーカーや自動車業界に捉われずに再資源化やリサイクル材料の供給に取り組んでいきたいと考えています。当社が市場から調達しているリサイクル材については、汎用性がありますので、当社の取り組みに興味のある事業者さまがいらっしゃれば、供給先を拡げていきたいと思います。
調達ネットワークを全国に広げる
- ー国内における調達面での課題や今後の見通しについてお聞かせください。
- 村上:触媒の回収量を拡大することが課題となっており、当部では回収量を拡大するために、全国に1000以上あると言われる解体業者さまとのネットワーク構築を進めているところです。
現在、国内では関東や山陰、東北などに調達先がある一方で、関西や中国、九州といった西日本を攻めきれていない状況にあります。今後は全国にネットワークを広げていくことが目標ですね。
- ー水素・エレクトロニクス・化学など、自動車以外の業界におけるPGMの活用についてはどうお考えですか?
- 児玉:水素関連で言いますと、燃料電池車(FCV)といったような、未来の車で私たちの扱っているようなメタルが使われる可能性があると考えます。FCVについては自動車業界全体にマーケットが広がるのではないでしょうか。
エレクトロニクス分野については、プリント基盤などさまざまなところで、貴金属が使われていますし、化学業界については石油化学関連の触媒として活用が見込めますので裾野は広いと考えられます。実際に、引き合いをいただいている会社さまもあります。
私どもの取り組みにご興味をいただければ、自動車に限らず見積もりからでもお声がけいただければありがたいです。またコスト面に限らず、調達スキームやキャッシュフローの面でも、当社から様々なご提案ができると考えております。