「人とくるまのテクノロジー展2025」で、ホンダトレーディンググループが関わる『アルミダイカスト完全水平循環』技術が紹介されました

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2025年5月にパシフィコ横浜で、7月にAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催された「人とくるまのテクノロジー展2025」。自動車・モビリティ分野の最新技術が一堂に会する、この専門展示会でのHondaブースにて、ホンダトレーディンググループが協力を行った『アルミダイカスト完全水平循環』技術が地金サンプルとともに紹介されました。その経緯や技術の特徴・展望を、非鉄資源事業部 軽金属課の岡澤邦彦さんと舟田宏明さん(現 経営企画室)に聞きました。

モビリティ業界注目の展示会で紹介された「アルミダイカスト完全水平循環」技術

「人とくるまのテクノロジー展」では、自動運転、電動化、カーボンニュートラル対応といった業界の主要テーマに関連する製品やソリューションが紹介され、企業・研究機関による実車展示やデモンストレーション、専門家による講演も開催。業界関係者が多く集まるため、多業種の情報を得たり、普段接点のない企業との交流も可能です。「実際、普段は取引のない素材~部品メーカーの方などともお話ができたりします(岡澤さん)」。このように、モビリティの未来を捉える上で、今注目されている技術や取り組みを効率的に把握できる貴重な機会となっています。

そのなかで今回、Hondaブース内で「アルミダイカスト完全水平循環」技術が展示されました。ホンダトレーディングはHondaグループ唯一の商社であり、日頃からHondaの生産に関わる原材料を供給しています。加えてアルミ製造子会社であるホンダトレーディングアルミニウムに検証やテストを実施できる設備を持っているため、さまざまな共同研究開発を行ってきました。いわば「Hondaにとっての試験室」のような存在として、難易度の高い案件において、経験値を蓄積してきたといえます。今回の展示技術も本田技術研究所から共同研究開発のご提案を受け、革新的な技術の確立に向け、テーマ選定後の実現検証の段階から技術協力を行いました。「この技術を開発した先にはグローバルへの量産適用も見据えていたため、海外の市場調査や経済合理性の検証も含め、2年以上の時間をかけて取り組んできました(舟田さん)」。

人とくるまのテクノロジー展2025 Hondaブース展示資料 「アルミダイカスト完全水平循環技術」
人とくるまのテクノロジー展2025 Hondaブース展示資料 「アルミダイカスト完全水平循環技術」

Hondaグループが掲げる2050年「サステナブルマテリアル100%」に大きく貢献

自動車の軽量化や環境対応を進めるうえで、アルミニウム部品のリサイクル材活用は重要なテーマの一つです。アルミニウムはリサイクルによる品質劣化が少なく、効率的な回収・リサイクルシステムもできているため「リサイクルの優等生」と称されますが、ダイカスト材のリサイクルは市中で回収された金属スクラップを原料とするため、スクラップに不可避的に混入する鉄部品からFe成分がアルミ溶湯に溶け込むことがあり、アルミ純度の高い展伸材スクラップ(サッシ)等で希釈し溶湯中のFe濃度を低減(カスケードリサイクル)する必要がありました。

今回展示された技術は、スクラップ溶解時に異物除去や成分調整を高精度に行うことで、アルミ純度の高い展伸材スクラップ等を使用せず、ダイカストスクラップ(ADC12および同種材)のみを原料とする「完全水平リサイクル」を可能にする技術です。

Hondaブースで展示されたホンダトレーディングアルミニウムのインゴット、Feスラッジなど
Hondaブースで展示されたホンダトレーディングアルミニウムのインゴット、Feスラッジなど

この水平リサイクル技術は、EV化や多様なモビリティを展開していくときに不可欠な車体の軽量化を支える「ギガキャスティング」という大型一体成型部品の製造にも貢献が期待されています。さらに、今後、環境規制の厳しい欧州市場などにおいてアルミリサイクル材料の需要が拡大していく中で、スクラップの調達性に対し、本技術によって調達リスクの回避・軽減が期待されています。
本技術によりアルミニウム材料の完全水平循環が可能になれば、鉱物資源から精製するバージン材の使用を減らすことができ、コスト削減とともにCO₂排出量の削減にもつながります。Hondaグループが掲げる2050年の「サステナブルマテリアル100%」の目標達成にも大きく寄与すると期待されます。

ラボレベルから量産テストまで対応可能な群馬工場だからできたチャレンジ

ホンダトレーディングアルミニウム 群馬工場
ホンダトレーディングアルミニウム 群馬工場
試験棟には使い分け可能な大小の炉を備える
試験棟には使い分け可能な大小の炉を備える

この技術の実現には、ホンダトレーディングが長年培ってきたアルミ製造の知見に加え、子会社であるホンダトレーディングアルミニウム 群馬工場が持つ、研究開発用の小型炉から量産用の大型炉までの多様な設備が大きく貢献しました。

小型炉は容量が1~500kg、量産炉で試験活用できるものとしては7tおよび10tの回転炉を備えているので、取引先の要望によって使い分けて試験ができます。この設備を使用してアルミ地金に含まれる介在物や金属組織、溶解歩留まりなどの材料品質についてなど、ラボレベルの実験から量産炉でのテストまで、17回以上の試行錯誤を重ねることで、この困難な技術を量産レベルで確立することに成功しました。このように製造現場と研究現場が近く、開発・製造・品質テストをスピード感持ってワンストップで行えるのが、ホンダトレーディングの強みです。「本田技術研究所のラボで検証した内容をふまえて現場での細やかな試験サポートやデータ分析を行うことで、実用化に貢献できました。当社にとっても大きな意義ある取り組みだったといえます(舟田さん)」。

ホンダトレーディングではモビリティ分野だけでなく、他業界の開発支援も手掛けています。事例は多々ありますが、たとえば工場排水を乾燥させて資源として活用できないかといった視点に基づき、群馬工場でテストを行っていたりします。自動車業界以外からのアルミリサイクル観点での試験協力を行うほかにも、このようにさまざまな分野での試験サポートやデータ分析を行っています。「今後はスクラップの選別など原料調達の段階から関わるなど、より包括的なソリューションを提供していく方針です。ぜひ気軽にご相談いただきたいですね(岡澤さん)」。

今回の技術協力で得た経験を活かしながら、ホンダトレーディングはアルミリサイクル業界のトップランナーを目指し、自動車業界、ひいては製造業全体のサステナビリティへ貢献していきます。

軽金属 事業紹介

ホンダトレーディングアルミニウム

Case Study 01 自動車業界でのアルミリサイクルのノウハウを活かし、Train to Trainに挑戦

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